事例紹介

International Coronary Congress(ICC):東京でのリアル開催の価値を発信

2022年121日~ 3日にわたり、JPタワーホール&カンファレンスにおいて、「Coronary Week 2022」と題し、The 8th International Coronary CongressICC)、日本冠動脈外科学会(JACAS)の第25回学術大会、日本冠疾患学会(JCA)の第34回学術集会の3学会が合同で開催された。

国際学会であるICCは、2015年に第1回学術集会としてニューヨークで開催され、以後、ニューヨークと米国以外の都市で交互に開催されている。第8回となる今回は、ポストCOVID-19として初めて対面式による東京開催が実現した。

会議直前、日本冠動脈外科学会理事長で「Coronary Week 2022」の発案者でもある、ICC2022 Program Chairの荒井裕国(JA 長野厚生連・北信総合病院/統括院長)先生に話をお聞きした。

Coronary(コロナリ)とは冠状動脈(血栓症)のこと。

3学会合同でのCoronary Week 2022の意義についてお教えください。

Coronary Weekは私の発案です。今回、国際学会であるICCを東京で開催するにあたり、日本国内の学会を組み入れられたらと考えました。会の関係を説明すると、ICCは冠動脈外科分野の国際学会で、日本冠動脈外科学会とは近い関係になります。日本冠疾患学会は、簡単に説明すると内科医と外科医が冠動脈疾患に関して語らう会です。今回日本冠疾患学会にも共催をお願いしたのは、裾野を広げた会にしたいという思いからです。外科医だけだと治療の考え方がどうしても外科サイドに傾いてしまいますが、それに対して「内科ではここまでできる」、「こういう症状だったら内科の方がいい」、そういう議論ができるように内科の先生にも入っていただきたいと思いました。

また、現実問題として、学会の数が結構多いのです。学会参加のために病院を休んで参加することは、ドクターにとっても結構な負担になります。同規模感で、疾患が冠動脈をターゲットにしている2つの国内学会は、いわば兄弟学会のようなものです。スケールメリットを活かして、ひとつの会場で開催することにより、参加者側にとっては実質的な回数が減りますし、主催者側にとっては全体の経費を抑えることができ、一緒に混じり合うことで議論を深掘りできます。そういう視点で相互乗り入れをしたわけですが、これが今後継続的なものになるかは今回のフィードバックにかかっています。個人的には、このように国内の兄弟学会が同時開催することのメリットは大きいと考えています。

それと、海外からの参加者に今回の東京開催の魅力というものを分かってもらいたい。私としては、ICCがニューヨークと東京で交互に開催されるようになれば非常に嬉しいですね。

東京を開催地に選ばれた主な理由は何でしょう?

それは東京の魅力です。今回、欧米からのInternational Facultyの方が最終的に23名来られますが、通常はこのクラスの方々は往復のビジネスチケットとホテルの宿泊を主催者側が負担し、さらに謝金も生じますので、招聘にはそれなりの経費がかかってきます。しかし、コロナによる様々な影響で学会の開催・運営資金は非常に厳しい面もあり、今回は謝金と航空券負担は無くし、宿泊提供も2泊のみとしました。そのような状況でありながら、殆どの先生方が来日くださるということは、海外から来られる先生方はみなさん日本、特に東京に来たいのだと思います。

なぜ、開催会場としてこのJP タワーを選んだかというと東京駅の美しさです。会場のホワイエの窓越しに美しい東京駅と、この時期のイルミネーションが輝く景色が望めるのは大きな価値です。しかも、ここは交通の起点ですから、海外から来た人は東京駅から日帰りで京都往復もできます。また、懇親パーティは東京ステーションホテルで行いますが、あのような重厚感がある日本の本物の建物の中で過ごしていただくことも海外からの参加者に東京の魅力を感じていただけると思っています。予算的に厳しい面もありましたが、学会の規模感と東京の魅力の両方を考えて、このロケーションでの開催を決定しました。

開催支援として、ホスト学会である日本冠動脈外科学会本部からも補助金を出し、東京都や東京観光財団からも会場費やハイブリッド開催に係る機材費の助成、ウェルカムパーティーにおけるアトラクションの提供など、様々な支援をいただきました。コロナの影響で企業からの協賛もどうなるか分からない状況もあり、国際会議(ICC)単独での開催は、非常に難しいということが早い段階から想定されていました。そのため、国内の2つの学会とリンクさせることにより参加者を担保し、いろいろなリスクを回避しながら開催まで漕ぎつけました。今後、国際会議を開催する上での一つの新しい形、と考えています。

繰り返しになりますが、私は、今後ICCがニューヨークか東京かという形になってくれればいいと思っています。例えば、同じコンテンツを聞くためにニューヨークまで行くのは、アジアの人にとってはかなり大変です。お金もかかるし時差もある。しかし、ここ東京にニューヨークを持ってきてしまえばいいわけです。そうすればアジアの人はニューヨークに行かなくても、来年は東京に行けば同じコンテンツが聞けるのだ、ということになる。東京が、そのように「アジアのハブとなる会議開催地」になる、それが理想ですね。

 
*3枚目の写真は、東京観光財団支援プログラムとして提供されたウェルカムパーティーにおけるアトラクション(サンドアート)

MICE Japan 2023・2月号記事より抜粋