事例紹介

「第94回日本感染症学会総会・学術講演会」がハイブリッド形式で大規模に実施される

2020年8月19日~21日に、国内の感染症の専門家学会である日本感染症学会主催にて「第94回日本感染症学会総会・学術講演会」(会場:グランドニッコー東京 台場)が開催されました。本学術集会は、参加登録者数3,000人を超え、オンサイト(会場)参加600名程度、各セッションは数百名のオンライン視聴がなされ、学会史上初、都内では最大規模のハイブリッド開催の成功例となりました。
今回は、本会議会長のお話とともに会議の様子をお伝えします。

 -ハイブリッド会議のモデルケースを目指し、ぎりぎりの時点で開催を決断

当初4月16日からのリアル開催が予定されていましたが、4月7日に発令された緊急事態宣言を受け、8月に延期が決定されました。「決断は非常に難しいものでした」と会長を務められた東邦大学医学部微生物・感染症学講座教授であり日本感染症学会理事長の舘田一博先生は振り返ります。刻一刻と状況が変化し新しい生活様式に切り替わる中でも、学会の活動を存続し、感染症分野を更に発展させるためには安全な学会開催のあり方を考える必要がありました。同時に様々な学会から安全な学会のあり方についての相談を受けていました。最終的に日本感染症学会がそのモデルケースを創りたいという思いからハイブリッド開催に踏み切られたと仰います。

-全60セッションをハイブリッドで実施、後日オンデマンド配信

ハイブリッド開催にあたっては、当日の会場での参加と同時に全セッションをライブ配信し、また後日オンデマンド配信する形態が取られました。各所属大学・病院等の規定や、海外に籍を置き会場参加が難しい演者の先生方もおられ、3日間で60のシンポジウム、27のランチョンセミナー、23の教育講演のうち多くがビデオ会議システムZoomを利用したオンライン講演でしたが、新型コロナウイルス感染症も含めた最新の研究結果等が発表されました。各会場においては今回のために構築したZoom受付システムを活用しながら、技術専門会社のスタッフによるスムーズな運営が見られました。その他、協賛企業による会場内でのブース展示、パンフレット配布に加え、オンラインでの展示も行われていました。

  

 

-専門家集団としての対策の工夫と意識

開催にあたっては随所に感染症対策の工夫が見られました。オンサイトの参加者に対しては大会ホームページや事前のメール等を通し体調や衛生管理への呼びかけをした他、厚生労働省の新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)のダウンロードや、今回のために用意された「濃厚接触日誌」を使い会期中の接触の記録をつけることが推奨されました。


当日のグランドニッコー東京台場の各会場においては、受付前の検温やマスク着用、手指衛生の徹底はもちろんのこと、参加者の距離を取った席の配置をした上、主要な講演においては講演会場とは別途ライブ配信用の会場を設け参加者を分散させることで、徹底的に密を避ける対策が取られました。また、通常学会で設けられる宴席は設けず、大会前後を通しても会食等の自粛が呼びかけられていました。同時に、セッションの合間にはグランドニッコー東京台場のホテルスタッフによるマイク、椅子、演台等のこまめな消毒も行われていました。

-これからのface to faceの学会のあり方を考える契機に

「この状況下においては益々オンライン化が進むでしょう。しかし、その中においてもやはりFace to faceで会う必要のある場もあります。今回の日本感染症学会のハイブリッド開催が、コロナ禍においても安全な対策を講じれば開催できるという一つの好事例となることを願います。」舘田先生のコメントの通り、本会議は東京でのハイブリッド会議の先駆けのみならず、今後の様々な学会運営にとっての大きなヒントとなることと思います。我々東京観光財団においても、引き続き都内での多様な会議開催事例を通し、主催者の皆様と共に東京での新しい国際会議開催のあり方を探ってまいります。