分身としてのアバターロボット:会議参加の新たな可能性
2020年10月10日(土)に世界初となるavatar MICEの仕組みを活用した医療者教育研修会が開催されました。リアルで会場に集まった参加者25名と、avatarにアクセスした参加者15名、オンラインでの参加者1名が同じ空間に集い、ポストコロナ時代における学会の在り方や、オンラインを活用した医療の在り方等について意見を交わしました。
コミュニケーション型ロボット「newme」など多くのアバターロボットとアバターロボットのプラットフォームの開発を手掛けるavatarin㈱の筒雅博様と、本研修会でファシリテーターを務められた国立研究開発法人国立国際医療研究センター乳腺・腫瘍内科の下村昭彦医師にお話をお伺いしました。
<筒様へのインタビュー>
-avatar MICEはどういうものでしょうか。
avatar MICEとは、リアルで行われているMICEの現場にアバターを通じて参加し、そこで生まれるFace to Faceのコミュニケーションやビジネスチャンスを創出する仕組みをいいます。アバターが参加者の分身となってビジネスイベントに参加できる新しいMICEの形です。
-アバターロボット「newme」を使用したMICEイベントは今回で2回目になりますが、率直な感想をお聞かせください。
前回のBG2C FIN/SUMではアバターロボットを5台使用しましたが、今回は台数を大幅に増やし、17台のnewmeを会場に持ち込み、そのうち15台を稼働させるという、私たちにとってはチャレンジングな経験でした。回線トラブルや、newmeの可動スペースの確保等、今後の課題が見えた実証ではありましたが、avatar MICEの実現へ向けて重要な1歩を踏み出せたと思います。ゆくゆくは、距離や時間、身体的制限に関わらず、avatar-inすることにより、MICEの現場へ接続できる仕組みを一般化し、アバターロボットを介してFace to Faceでコミュニケーションがとれる機会を創出していきたいと考えています。
-実施に至るまでに工夫された点、苦労された点を教えてください。
5ヵ国10都市からアバターインする参加者が、通信トラブルを回避し自由に会場内を移動できるように、コンパクトな機材設営で質の高い配信するための通信環境を整え、事前に参加者に対してアバターの操作方法をレクチャーしました。今回のワークショップを通して、音声や会場内のアバターの可動域等の課題が浮かびあがったので、今後も実証を重ね、avatar MICEの仕組みをより実現可能なものに近づけていきたいです。
-コロナ禍が続く中で、avatar MICEの展望をお聞かせください。
今後は国際展示場のような大型施設で、アバターロボットが自由に移動し、人間とロボットが共存する環境が当たり前のような空間を創りたいと思っています。コロナ禍により、急速にオンライン化が進んでいますが、newmeはオンラインでありながらもFace to Faceのコミュニケーションを可能にする技術であるといえます。偶発的な出会いから生まれるビジネスチャンスや交流はオンライン化が加速する中でも大切で、根強く求められているものだと思いますので、そういった機会を創出するための一翼を担えるように、avatar MICEの開催に向けたノウハウを蓄積していきたいと思います。
<下村医師へのインタビュー>
-ハイブリッド会議の中でもアバターを活用しようと思われた経緯を教えてください。
コロナ禍で会議や研修会は延期や中止が続き、オンライン会議が主流になっています。そうした中で、J-TOPの研修会やセミナーの在り方を考え直す必要があると思うようになりました。というのも、ZOOM等を使用したオンライン会議がほとんどで、以前のようなFace to Faceのコミュニケーションが取れず、やきもきしていたからです。そのような状況の中、J-TOPの設立者である上野教授よりアバターロボットを使用したavatar MICEについて伺いました。面白くて画期的な事を試してみたいと考えていたので、ワークショップの新しい取組としてavatar MICEを実施するに至りました。
研修会開催の1カ月前に正式決定となったため、実際準備期間は3週間程度しかありませんでした。実施して解決すべき課題がいくつか見えましたが、「新しい取組で面白い」や「直接面と向かって参加者とコミュニケーションがとれて楽しかった」など、好意的な意見も多数寄せられました。newmeを活用することで、時間的制限や身体的制限がある人が、リアルの会議への参加に比べかなり気軽に参加しやすくなると感じています。
-コロナ禍が続く中で、学会活動の展望をお聞かせください。
次回実施のワークショップでもnewmeを使用する予定です。さらに台数を増やし、参加者は本日の3倍程度を見込んでいます。会議や研修会においては双方向のコミュニケーションが重要だと考えています。オンライン会議ですと、場合によっては一方通行になりかねないので、コロナ禍でもリアルの会議のようなFace to Faceのコミュニケーションの機会・空間を創出し一体感が生まれるよう、avatar MICEの仕組みを今後も積極的に活用していきたいと思います。今回のワークショップはその解決策の一つになり得たと思います。