事例紹介

「第94回日本整形外科学会学術総会」が無観客・オンデマンド形式で開催

2021年5月20日~23日に日本整形外科学会(会員数25,000人)主催により「第94回日本整形外科学会学術総会」が東京国際フォーラム、JPタワーにおいて無観客での収録を主目的として開催され、成功裡に終了いたしました。(収録されたプログラムは2021年6月10日(木)~7月12日(月)の日程で、登録者を対象にオンデマンド配信)。 本学術総会の学会長である金沢大学大学院整形外科学講座 教授の土屋 弘行先生にお話しをお伺いしました。

  フラッグs.jpg 受付s.jpg 土屋先生.jpg  

-緊急事態宣言が発出される中、開催に向けた調整についてご苦労された点についてお聞かせ下さい-

昨年、本学術総会は新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け完全オンラインによる開催となりました。オンライン開催は参加者同士のネット―ワーキングが困難なことに加え、スポンサーの満足を得ることが難しいなどの声が多く聞かれたことから、今年はリアル参加者をより多く集めたハイブリッド会議を目指して準備を進めて参りました。 こうした中、4月23日に東京都において緊急事態宣言が発出され、5月7日には、その宣言が5月31日まで延長されることが決定しました。当初、緊急事態宣言が発出された場合は中止の方向で検討していたのですが、会議施設における規制の一部が解除されたことを受け、座長演者やスタッフ等、一部プレイヤーのみが会場での収録に参加する「無観客」開催に決定しました。それはゴールデンウィーク明け、開会の2週間前のことでした。また、参加者個別のMy pageにて、直前までリアル参加の意向を変更できる仕組みとし、プレイヤー限定ではあるものの、開催間際まで会期中の弁当や配布物の正確な数の把握に努めました。 海外招待講演者の来日については、諸手続きの都合もあり2月の段階でオンラインまたは録画での講演の判断をせざるを得ない状況でした。開催にあたっては、新型コロナウイルス感染症予防対策には特に配慮し、受付および各会場入り口に消毒液に加え、検温装置を設置しました。また、検温については測定された体温が印字されたラベルシール(日により色が異なる)を参加証に貼付けることにより、会場ごとに検温する手間を省き、参加者の負担を軽減する工夫も行いました。

  会場s.jpg 消毒s.jpg 展示会場s.jpg

-開催形式の変更にともなうご苦労や工夫された点についてお聞かせください-  

元来、当学会では各プログラムを後日オンデマンド配信するスタイルを取っていたため、追加機材の必要はなく、準備にともなう大きな混乱はありませんでした。しかしながら、学会開催の大きな意義の一つにFace to faceの交流があり、この点についてはリアルでの参加者が少なくなる状況となっても、規制等が許す限り開催する意向でした。実際の会期中は限定されたプレイヤーのみの来場とはなりましたが、展示会場やホワイエ等での活発な意見交換が行われる様子を目にすることが出来ました。出展者については、当初予定の半数以下となったものの、会場におけるブース展示を実施したケースも少なくなく、それら展示については私自身が各ブースを訪れ、説明を受ける様子を収録し、後日オンデマンドでの参加者にも情報が伝わるように配慮しました。また、学会参加には単位取得という目的もありますが、オンデマンドでの受講に際しては不正防止の観点から、各プログラムの終盤にテストを設け、全問正解を以て受講認定(単位取得)をする仕組みを取り入れることにより、公平性を担保しました。

-今後の会議開催や学会活動に向けた展望についてお聞かせください-

医療関係者については、必然的に早期にワクチン接種をすることになるため、ドクターの方々は総じてリアル開催をポジティブに捉えているケースが多いのではないかと思います。また、学会参加のために移動し、休診をしなくてはならないケースもある地方の開業医の先生方からは、今回の様なオンデマンド開催もありがたいと言うコメントが少なからず聞こえる一方、やはりFace to faceでの議論やコミュニケーションが魅力であるリアル開催を望む声が多く寄せられました。 ポスト・コロナの新しい社会、生活様式が模索され、多くの分野でその方向性が示されつつあります。 学会開催や学会活動においても、インターネットを利用したオンデマンド視聴などが、コロナ後も取り入れられていくことでしょう。しかし、学会は単なる発表を聞くだけの場ではありません。会場に漂う空気、実際にその先生と視線を合わせ、真剣に真理を探求することでしか得られない深い学識、廊下でふと顔見知りの先生とお会いし旧交を深める中で得られる新しい閃き、人と人との精神的な触れ合いと交流の場でもあり、こういったことが次の創造へ繋がり,学術的な発展へと繋がっていきます。今後もリアル開催は必須のものとして残り、ハイブリッド開催化が進んでいくと考えています。