事例紹介

リアル開催再開の兆し―ACTA2021 TOKYOが盛況に開催

2021年10月15日~17日の3日間、紀尾井カンファレンス(東京都千代田区)で7th Asian Conference on Tumor Ablationが開催されました。
本会議はラジオ波焼灼術(RFA)、マイクロ波焼灼術(MWA)、凍結療法(cryoablation)等のアブレーションにかかわるアジア地域の専門家が年に 1 回参集し開催される学会です。本来であれば2020年に開催予定でしたが、新型コロナウイルス感染拡大に伴い中止となりました。今年、新たにACTA2021 TOKYOとし、 "Lead the World"のテーマのもとに、ACTA の国際社会における立場およびアブレーションの今後の医療における役割をすべての参加者が認識することを目指して、ハイブリッド形式での開催が実現しました。
今回はACTA2021 TOKYOの会長である順天堂大学大学院医学研究科の椎名秀一朗教授に会議初日にお話をお伺いしました。
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-ハイブリッド形式とのことですが、場内には多くの方がいらっしゃるように思われます。参加者はどのぐらいでしょうか。
今年3月の見込みでは、海外から約300名、国内から約200名でした。しかし、新型コロナウイルス感染症が下火にならず、海外はおろか国内参加者の申し込み状況も伸び悩んでいました。それでも、10月に入り緊急事態宣言が解除され、都内の感染者もかなり減っているので、リアルの参加者が直近でかなり増えました。今日は日本全国から多くの医療関係者が来ています。私自身コロナ禍になってからハイブリッド形式の会議にはいくつも参加していますが、会場内にこれだけ多くの人が集まる会議は初めてです。明日、明後日は週末になりますので、さらに多くの方が来場することが予想されます。おそらく250名を超えるのではないでしょうか*。オンライン登録は300名以上です。参加登録費をリアルとオンラインで差をつけず、一律にしたことも来場者が増えた理由でもあるでしょう。

-他にも参加者が増えた要因はありますか。
参加費が一律と言いましたが、参加費は従来と比べてかなり下げました。参加国は東アジア地域がメインですので、より多くのアジア諸国から参加できるよう配慮しました。プログラム編成にも腐心し、参加者の関心を喚起するためにJoint Symposium、 Asian Forumなど魅力的なセッションを多く盛り込みました。さらにオンライン参加者の時差を考慮し、一つのセッションはなるべく近隣国の発表者で構成されるよう調整しました。これらが参加者増につながったと考えています。これは主催側にとっては本当にうれしいことです。
また、ACT2021 TOKYOを実施するにあたり、東京都の助成金支援を申請しましたが、その支援は参加者数が影響すると聞いています。助成金は大変ありがたい制度で、この会議の収支に大いに役立っています。

-ハイブリッド開催のメリット、デメリットはありましたか。
メリットはなんといってもオンラインで気軽に参加できるということです。忙しい先生方にとっては移動や宿泊にかかる拘束時間を省くことができますし、発表は事前に録画した映像を流すことも可能です。しかし、反面、気軽さがデメリットでもありました。実は一人の座長の方から会期直前に辞退の連絡があり、複数の先生に打診して、会議前日にようやく見つかるということがありました。今回座長は国内外で84名いらっしゃいますが、座長交代という事態は複数回ありました。来日してリアル参加していれば、緊急事態が発生しても参加者が自分で対応するため急遽帰国するということはほとんどありませんが、自国にいてオンライン参加していると自分で緊急事態に対応するために座長や発表を土壇場でキャンセルということが起こりえます。今後の会議は、実地参加の傾向は強まると思われますが、ハイブリッド形式はなくならないでしょう。ハイブリッドならではの不測の事態に対して、事前の対策を準備しておいたほうがよいかもしれません。また、ハイブリッドはコストが高くなる可能性があることも想定しておいたほうがよいと思います。
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-国際会議でもサステナブルな配慮が求められるようになりました。本会議ではどのような取り組みをされましたか。
フードロスを極力出さないよう取り組んでいます。ランチはお弁当ですが、発注する前に参加者に必要かどうかを再確認しました。また、コーヒーブレイクは中止しました。中止の理由はハイブリッド形式の経費に充てるためと、コーヒーのために列をなす密を避けるためですが、フードロスを心配する必要がありません。予稿集はデジタル版に加え冊子版も印刷しましたが、なるべくロスが出ない部数としました。

-今後の会議開催や学会活動に向けた展望についてお聞かせください。
アジアは世界最大の人口をもつ地域で、肝細胞癌などの患者も最も多く、アブレーションに関わる医師もアブレーションの件数も世界で最多であり、また市場規模も北米やヨーロッパを上回って世界最大です。アジアはアブレーション発祥の地であり、その技術や経験において常に世界をリードしてきました。したがって、国際会議を通じた海外との情報交換やネットワーキングは必須です。今回の会議でリアル会議再開の兆しを感じます。今後も機会をとらえて会議、セミナー等を開催し、アブレーション研究をグローバルに進展させていきたいと思います。

*ACTA2021 TOKYOの参加者数はリアル参加275名、オンライン参加247名、合計522名であった。