IAEE-ハイブリッド形式は継続するか?
7月31日から8月4日まで政策研究大学院大学において、「Mapping the Energy Future - Voyage in Uncharted Territories」をテーマに第43回IAEE国際会議がハイブリッド形式で開催され、総勢約650名が参加しました。リアル参加者は海外約240名を含む約400名でした。多くの講演やセッションで活気あふれる中、TCVBは折り紙、ちぎり絵の文化体験プログラムを海外参加者に提供しました。
閉幕直後、大会組織委員長の山下ゆかり氏にインタビューを行いました。
会議を終えてのご感想をお聞かせください。
1年遅れての開催でしたので、参加者全員がやっと会えたという喜びと、大成功に終わったという安堵感でいっぱいです。パンデミック時の開催や入国手続きなど、乗り越えなければならない問題がたくさんありましたが、皆さんの協力で乗り越えることができ、感謝しています。また、今回は当会議史上初のハイブリッドイベントでしたが、オンラインの参加者にも満足していただけたと思っています。
イベント開催中に行った感染予防対策は?
参加者全員の安全を最優先するため、ソーシャルディスタンスの取り方や体温チェックなど、通常の予防策をすべて実施しました。中でも、参加者全員に確実にマスクを着用していただけるかが心配でしたが、会場では参加者全員分の予備のマスクを用意し、緊急事態であることを参加者全員に伝えて、全面的な協力を仰ぎました。また、400名の参加者のために200個の検査キットを用意し、体調を崩した海外からの参加者のために英語を話せる医師のいる近隣のクリニックを確認、リスト化して準備しました。感染症対策が万全だったこともあり、最終的に医師の診察を受ける必要のある参加者は発生しませんでした。
最大の課題は何でしたか?
パンデミックによる不確実性の中で会議を開催したことです。論文の募集は、コロナの規制が緩和された昨年9月に行われましたが、会議開催そのものがどうなるかを知るには、時期尚早でした。1月までは患者数が増加しており、3月までは開催形態が不透明で、完全なオンライン会議になることが懸念されました。このように決定打がないため、企画段階すべてにおいて柔軟な対応を迫られました。また、ハイブリッド形式は、私たちのイベントでは初めてでしたので、運営にあたり何が必須事項なのかわからず、一層手探りで進める状況となりました。また、ハイブリッド形式はリアル形式の会議に比べると圧倒的にコストがかかるため、予算面での検討も必要でした。
サステナビリティの面で工夫されたことはありますか?
残念ながら、今回は参加者の安全を確保するために部屋の換気をよくする必要があり、室温を快適に保つためエアコンはかなり使いましたので、この点でサステナビリティに貢献したとは言い難いところです。しかし、エネルギーに関する会議である以上、サステナビリティは非常に重要であり、実際、多くのセッションでは再生可能エネルギーなどによる持続可能な未来づくりについて議論がなされました。エネルギー安全保障を実現し、人類が存続していくためには、言葉だけでなく、行動でサステナビリティへのコミットメントを示していかなければなりません。本会議では現実を甘く見ることなく、こうした重要な実践的議論を行えるような環境づくりに全力を尽くしました。また、東京都のゴミ処理に関する条例を遵守し、参加者数分の弁当を用意し、弁当や飲料はなるべく紙包装で提供しましたので、フードロスやプラスチックごみの削減には充分配慮できたと思います。
ネットワーキングの機会はどのように設けられましたか?
直接会って議論することはきわめて刺激的で、私たちの分野の発展に必要なイノベーションにつながるため、ネットワーキングは非常に重要だと思います。昼食やコーヒーブレイクは、国内外の同僚とネットワークを構築する絶好の機会でした。今回、多くの参加者がリアルで参加したことは私たちにとってうれしい驚きでしたが、そもそもネットワーキングはこのような会議の中心的役割を担うものであり、欠かすことができないため、より多くの海外からの参加者を温かく迎えることができなかったことを残念に思います。オンラインの参加者にリアルと同じようなネットワーキングの機会を作ることはできないと思います。
旅行先としての東京の評判はいかがでしたか?
東京は、安全で清潔、便利で、人が都市に求めるものがすべて揃っているので、ビジネスパーソンにとって素晴らしいデスティネーションです。東京は驚くほど変化に富んでいて、伝統とモダンがユニークに融合していますし、食事の選択肢も限りなくあります。若い参加者の多くは、この唯一無二の大都市を自分自身で体験するために東京でのリアル会議参加を希望しており、これが予想を上回る参加者数につながったのだと思います。
IAEEでは、活発な議論を対面で行い研究活動を発展させるのが本来の会議のあり方だと思いますので、今回の会議がハイブリッド形式での最初で最後の会議であり、IAEEの全員がいつか再びこの東京に集い、会議に積極的に参加できることを願っています。「ハイブリッドはリアルに如かず」です。