事例紹介

City-Tech Tokyo:東京の近未来都市を想像させるテクニカルツアー

2023227日、28日にかけて、東京国際フォーラムで「City-Tech Tokyo」が開催され、大盛況のうちに終了しました。この会議は、「スタートアップとのオープンイノベーションで持続可能な社会を実現するためのイベント」であり、今回は、"Infrastructure" "Environment" "Living" "Culture "の4つのテーマを通じ、日本を代表する建築家である隈研吾氏や東京都知事をはじめさまざまなスピーカーが参加し、ハイブリッド形式で総勢26,000人を超える参加者が集まりました。

東京観光財団コンベンション事業部では、海外からの参加者を対象に、彼らの教育機会を最大化するためにCity-Tech Tokyoのコンセプトに沿った半日の東京テクニカルツアーを計画しました。以下、東京の近未来都市を想像させるCity-Tech Tokyoのツアーの中から、2つのハイライトをご紹介します。


水素燃料の旅客フェリー "ハイドロびんご" 

2月28日は水素を燃料として推進するユニークな水素船「ハイドロびんご」に乗船するテクニカルツアーです。ハイドロびんごはこの種の船としては世界初の旅客フェリーで、全長19.4m、アルミニウム合金製の双胴船タイプで、ディーゼルと水素を利用したデュアルフューエルエンジン2基を搭載しています。80人乗りで、最高速度26.0ノットで航行することができます。

このエコシップは、ツネイシクラフト&ファシリティーズ株式会社(広島県)が、船舶の脱炭素化を目指した海洋水素システムの豊富なノウハウを持つベルギーの船主、Compagnie Maritime Belge(CMB.TECH)と共同開発しました。現在は、スタートアップ企業であるジャパンハイドロ株式会社(JPNH₂YDRO CO.,LTD)がフェリーを運航しています。船名は、ギリシャ語で水を意味する「Hydro(ハイドロ)」と、現在の広島県東部を構成する旧地域「Bingo(備後)」に由来しています。


ツアーは日の出桟橋からジャパンハイドロ(株)による船の安全性に関する説明でスタートしました。説明によれば、水素貯蔵タンクは船尾にあり水素ガス検知器が設置されている一方で、タンクと客室の間には厚い壁があるため、旅行者の安全は確保されているそうです。また、船は日本小型船舶検査機構によって安全性が承認されています。



水素インジェクションシステムは、ベースとなるエンジンに最小限の変更を加えるだけで使用できます。ハイドロびんごは、ディーゼルエンジンと水素燃料の混合燃料を使用した航行において、従来のディーゼルエンジンと比較して航行中CO₂排出量を最大50%も削減できます。モニター画面には、CO₂排出量削減に関する試験結果やエンジン回転数、港からの距離に加え、軽油と水素の比率を示すバーも表示されます。水素デュアルフューエルシステムは、万が一トラブルが発生した場合、ディーゼルエンジンのみでの航行に自動的に切り替わるよう制御されており、システムの信頼性は十分確保されています。参加者は水素供給が予想以上に容易に導入されていることに非常に感心していました。

ハイドロびんごの優れた特徴に納得した後、参加者はオープンデッキにのぼり、澄み渡る青空のもと、レインボーブリッジ、お台場海浜地区、東京国際クルーズターミナル、オリンピック・パラリンピックの選手村などを見学し、東京湾のクルーズを最大限に楽しみました。参加者にとっては船の未来を体験できる意義深いテクニカルツアーとなりました。

デジタルテクノロジーと未来型オフィス:森ビル&CIC Tokyo

31日に開催されたツアーでは、参加者は通常一般非公開とされている森ビルの施設「森ビルアーバンラボ」を特別訪問し、東京の都市全体を俯瞰し、多角的に考えるきっかけとなるデジタルテクノロジーの一端を体験。その後、虎ノ門ヒルズにある大企業の新規事業創出に特化するインキュベーション施設「ARCH」及びスタートアップ向け最先端シェアオフィス「CIC東京」でイノベーション創出の土壌となる未来型オフィスを視察しました。

森ビルアーバンラボ

世界最大級の国際広告賞であるカンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル2020/2021のデジタルクラフト部門で銅賞を受賞した森ビルアーバンラボは、都市を表現した模型と最新テクノロジーを効果的に組み合わせた、都市全体を俯瞰し、都市と東京の未来を多角的に考えるための研究施設です。施設には1/1000縮尺で忠実に再現された東京の巨大な都市模型と共に、同じ縮尺のNew Yorkと上海の模型が展示されており、各都市を比較することで、それぞれの都市の特色や課題を深く理解することが可能です。また、東京の都市模型には約30台のプロジェクターと最新鋭の映像技術によるプロジェクションマッピングが施されており、あらゆる切り口で東京を捉え、来館者と一緒に東京の未来について考えるためのコンテンツが実装されています。

暗闇の中、画面中央に表示された「welcome」の文字を皮切りに、模型と音楽を駆使したプロジェクションマッピング技術等による没入型の体験がスタート。東京の海岸線の変化、地形や緑地、道路・地下鉄網など東京の多様な姿を模型とデジタルテクノロジーの融合により、まばゆい色彩と臨場感あふれる映像で学ぶ体験に、参加者は誰もが感動していました。また、森ビルの代表的なプロジェクトである「虎ノ門ヒルズ」と「麻布台ヒルズ」のファクトブックをもとに、森ビルがグローバル都市東京をさらに促進するために行っているさまざまなプロジェクトや、都市開発に対する考え方、アプローチ、耐震性能をはじめとする地震に対する備えなども紹介されました。

虎ノ門ヒルズ ビジネスタワー CIC Tokyo、ARCH、虎ノ門横丁

その後、虎ノ門に移動し、同じく森ビルが管理・運営する「虎ノ門ヒルズ ビジネスタワー」(2020年開業)を視察しました。ここには、大企業の新規事業部門が約120社集まるインキュベーションセンター「ARCH」と、スタートアップを中心に大企業や地方自治体等250社以上が入居する日本最大級のスタートアップ向けシェアオフィス「CIC Tokyo」があります。「CIC Tokyo」は、イベントスペース、会議室、ウェルネスエリア、スポーツルーム、カフェスペースなどを備え、バイリンガルスタッフが常駐するなど、働く人に最高の環境を提供しています。この先進的なオフィスを、参加者も興味深く視察されていました。最後には同じ建物内にあり、日本の名店26店舗がビルの1フロアに屋台のように軒を連ねる「虎ノ門横丁」を視察して終了しました。

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示唆に富んだ今回のテクニカルツアーは、City-Tech Tokyoに最適なツアーであり、参加者は今後の都市開発のあり方を垣間見ることができました。

東京観光財団は、今後も主催者のリクエストに応じたテクニカルツアーを通して国際会議の参加者が東京の先進性を学ぶ機会を提供します。